アリババの動画生成モデルWan3.0が8月24日、全面公開ベータとして提供開始された。1回の生成で最長30秒まで対応し、doc・xls・ppt・pdf・mdといったオフィス文書を初めて入力素材として受け付け、手持ちの資料をそのまま動画に変換できるようになった。利用者はアリババクラウドの百煉(Bailian)、万鏡一刻、万相の公式サイト、そしてQwen Chatのデスクトップ版で体験可能で、Qwenアプリでは段階的に開放されている。
尺の長さの意味は編集の現場でより顕著になる。10秒未満のクリップは1カットを収めるのがやっとで、連続したカメラワークやワンカット表現はほぼ成立しない。30秒まで伸びることで、初めて完結した小さな場面が収まる余地が生まれる。今回アリババが示した能力一覧の中では一貫性が上位に置かれている——キャラクター、小道具、音声、空間の関係性、スタイルを尺全体で崩さずに保つことが、長尺化においてもっとも難易度の高い部分だ。
価格が制作フローへの採用可否を決める
API料金は秒単位で計算され、480P・720P・1080Pはそれぞれ1秒あたり0.3元・0.6元・1.2元。8月24日から9月23日までは3割引となり、それぞれ0.21元・0.42元・0.84元まで下がる。
実際の制作コストに換算すると、1080Pで30秒の動画1本は通常価格36元、キャンペーン期間は25.2元。同じ長さの480Pなら通常価格9元、キャンペーン期間は6.3元となる。
さらに制作規模で概算してみる。5分尺のAIショートドラマ1話を、すべて1080Pでワンテイク採用と仮定した場合、純粋な生成コストはおよそ360元。実際の制作では没テイクは避けられず、歩留まりを3対1と見積もるとコストは1000元強になる。この水準は実写撮影とは桁が違い、以前の分単位課金で数十ドルかかっていた方式とも一線を画す。ショートドラマ、広告、観光プロモーションなど大量の完成映像を必要とする発注側にとって、コストはすでに「試してみる」段階から「予算に組み込める」段階へと移った。
30秒をカット数に置き換えると、ハードルの所在がより見えてくる。通常のテンポで編集した30秒の完成映像は、おおむね4〜6カットになる。モデルはこの切り替わりの中で、同じ顔、同じ小道具、同じシーンを崩さずに保つ必要がある。10秒級のモデルは尺の短さが一貫性の破綻を覆い隠してくれるが、30秒ではその覆いがなくなり、崩れがそのまま可視化される。今回アリババがキャラクター、小道具、音声、空間の関係性、スタイルの5項目をまとめて能力一覧に並べたのは、おおむねこの問題への回答と見てよい。
1回30秒という点で、Wan3.0は最初の到達者ではない——バイトダンスのSeedance 2.5がすでに30秒まで尺を伸ばしている。国内の複数社がほぼ同じタイミングで同じ指標を同じ水準まで引き上げたことは、長尺の一貫性が解像度に代わり、この局面の主戦場になったことを示している。
入口をプロンプトから1本のPPTへ
doc・xls・ppt・pdf・mdの入力対応こそ、今回とりわけ注目すべき設計だ。従来、製品紹介動画を1本作るには、まず資料に目を通し、絵コンテに分解し、プロンプトとして書き起こす人手の作業が必要で、この「翻訳」工程が生成そのものより長い時間を占めることが多かった。文書をそのままモデルに投入することで、この工程がまるごと省略される。代償は制御性の低下だ——どのページを画面にし、どの段落をナレーションにするかはモデル任せになり、やり直しの際に問題箇所を特定しにくい。素材の標準化度が高いほど、この方式は威力を発揮する。
企業側の用途はこの設計とぴったり噛み合う。研修資料、製品マニュアル、決算資料、社内通知は、もともとPPTやPDFの形で存在している。Wan3.0がQwen Chatデスクトップ版や百煉に組み込まれた理由もここにある——狙っているのはSNS上の気軽な創作ではなく、オフィスワークフローそのものだ。
生成品質については、アリババは実写風レンダリングのディテールを強調しており、今回の重点として微表情、肌や目元の処理が挙げられている。色調のなじませ方やスタイルの融合にも調整が加えられた。業界の反応は「安定」「リアル」「質感がある」という3つの言葉に集約されている。ユーザーが具体的に挙げる変化は、長尺のナラティブの連続性が保たれやすくなったことと、パラメータ調整の往復回数が減ったことだ。
こうした評価は現時点では体感レベルにとどまり、公開された比較ベンチマークはまだ追いついていない。答えを出すのはキャンペーン終了後の1カ月間——実際に何本の商用完成映像がこのモデルから生まれるかだろう。
参考資料:アリババクラウド公式発表、量子位(QbitAI)、IT之家、CocoLoop。1回30秒の生成時間、doc/xls/ppt/pdf/md入力対応、提供プラットフォーム一覧、および480P/720P/1080Pの通常価格・キャンペーン価格(1秒あたり0.3/0.6/1.2元)はいずれも上記情報源に基づき確認済み。制作コストの試算は当サイトによる概算。