ChatGPTの標準モデルがGPT-5.5 Instantに

OpenAIは、ChatGPTで多くのユーザーが最初に使うモデルを入れ替えた。

大きな発表イベントを開いたわけではない。数億人が日々開くチャット欄の標準モデルを、GPT-5.3 InstantからGPT-5.5 Instantへ静かに差し替えた形だ。

今回目を引くのは名称よりも、OpenAIがはっきり示した数字だ。52.5%である。

数字を表に出した更新

OpenAIは今回、「大幅に改善」といった曖昧な表現だけに頼らなかった。医療、法律、金融のようなリスクの高い質問では、GPT-5.5 Instantの幻覚的な記述が前世代比で52.5%減ったとしている。ユーザーが過去に事実誤りを指摘した難しい会話でも、不正確な記述は37.3%減少した。

ベンチマークの数字も上がっている。

テストGPT-5.3 InstantGPT-5.5 Instant
AIME 202565.481.2
MMMU-Pro69.276

AIMEは数学コンテスト級の難問を扱う指標で、65.4から81.2への上昇は大きい。博士課程レベルの科学推論を問うMMMU-Proでも、80%台に近づいた。

ただし、ChatGPTのInstant系列はもともとスコア競争だけを狙うモデルではない。求められるのは低遅延と高い信頼性だ。たとえば「この薬をイブルチニブと一緒に飲んでよいか」と聞いたとき、3秒で誤答が返るほうが、30秒待って正しい答えを得るより危険になりうる。

過剰なemojiも減らした

OpenAIは、回答がより簡潔で要点を外さず、内容の厚みは保ちながら、ChatGPTらしい使いやすさや温度感も残したと説明している。

言い換えれば、余計な言葉を削ったということだ。

具体的には、回答の語数は約30%、行数は約29%減った。さらに、不要なemojiのように回答を雑然と見せる要素を避けるという。

この半年ほど、ChatGPTの返答に的やロケットやきらめきの記号が多すぎると感じていたユーザーには、OpenAIがその不満を受け止めた更新に見える。

どう適用されるのか

GPT-5.5 InstantはただちにGPT-5.3 Instantを置き換え、ChatGPTの標準モデルになる。

  • Plus/Proユーザー: Web版ではすでに利用可能で、モバイル版にも順次展開される。
  • 無料/Go/Business/Enterpriseユーザー: 今後数週間で段階的に提供される。
  • 開発者: APIではchat-latestとして扱われ、旧GPT-5.3は有料ユーザー向けに3カ月間の移行期間として残る。

もう一つ、目立たないが重要な変更もある。ChatGPTのメモリ参照元が、すべてのモデルで見えるようになった。どの会話やどのファイルから自分に関する記憶を引き出したのかを確認し、削除や修正ができる。会話を他人に共有しても、その相手にメモリ参照元は表示されない。

なぜOpenAIは幻覚の数字を出したのか

この2年、大規模モデル企業が幻覚について語るときは、曖昧な改善表現にとどめるか、あえて深く触れないことが多かった。

OpenAIが今回は割合を明記した理由は分かりやすい。金融、医療、法律といった場面でChatGPTの誤答に困ったユーザーは多く、世論の圧力も積み重なっている。2月にGPT-4oを退役させた際、一部ユーザーがGPT-4oを「最高の友人」と呼んだ騒動も、標準モデルへの依存が製品チームの想像以上に深いことをOpenAIに教えた。

標準モデルの変更は、発表会も大見出しも伴わないかもしれない。それでも、次に数億人がChatGPTへ質問したとき、どんな答えを受け取るかを直接左右する。

今回の52.5%は、OpenAIが初めて明確に机上へ置いた数字だ。

次の焦点は、ClaudeやGeminiも自社モデルの幻覚率を公開するかどうかである。

参考資料:CocoLoop、GPT-5.5 Instant: smarter, clearer, and more personalized(OpenAI公式ブログ);OpenAI releases GPT-5.5 Instant, a new default model for ChatGPT(TechCrunch);OpenAI releases GPT-5.5 Instant update to make ChatGPT smarter with fewer emoji(9to5Mac)