Anthropic、無料OSSスキャナーで人の確認を省略

Anthropicは10月8日、オープンソースプロジェクト向けに無料の脆弱性スキャンサービス「OSS Scanner」を公開した。参加は任意で、スキャンはClaude Mythosなど同社独自のモデルが担う。生成された報告書は人による審査や優先度付けを経ず、そのままメンテナーの手元に届く。

各報告書には、単独で実行できる再現プログラムと脆弱性の説明が付く。原因を特定できた場合は、二分探索で見つけた不具合混入コミットも添付し、可能であれば修正パッチも提示する。Anthropicは発表の中で、報告書には誤りや無効な内容が含まれる可能性があるとしている。

申請できるのは誰か

参加資格の基準はGoogleのOSS-Fuzzに近く、インフラやユーザーの安全に「重大な影響」を持つプロジェクトかどうかを個別に審査する。申請はプロジェクトの中核メンテナーが行い、GitHub上のanthropics/oss-scannerリポジトリにプルリクエストを送り、テンプレートに沿ってプロジェクト情報を記入する形だ。

発表では、個々のプロジェクトをどの頻度でスキャンするか、メンテナーが途中で参加をやめる場合の手続きについては触れていない。開示は協調的脆弱性開示(CVD)の方式を取るが、具体的な期限は発表文に記載されていない。

半年間の試験運用で見えた数字

Anthropicによると、過去半年間に同社のモデルでオープンソースコードをスキャンし、候補となる脆弱性を2万9000件以上検出、そのうち人が確認したのは約6000件だった。初期テスト段階では48のプロジェクトから高・深刻度と判定された97件を抽出し、うち85件が開示プロセスの要件を満たした。割合は約88%になる。

別の数字は、すでに送付済みの報告書から出ている。メンテナーに届いた報告書は5000件近くに達した。同社が示した74件のサンプルのうち、メンテナーが有効と確認したのは72件、CVE番号を取得したのは5件だった。発表で名前が挙がったプロジェクトにはPostgreSQL、OpenSSL、wolfSSL、HotCRP、Linuxが含まれる。

"The reports we received from Anthropic, raw model output included, were as good and sometimes better than what we get from people."

(Anthropicから受け取った報告書は、モデルの生出力を含めても、人が提出したものと同程度か、それ以上に良かった。)

人の確認を外した理由

Anthropicが挙げる理由は、スキャンを「より速く、より頻繁に」行うためだという。自社の数字を見ても人手が追いついていないことがうかがえる。2万9000件の候補のうち、人が確認したのはおよそ5分の1にとどまる。スキャンの規模が拡大したことで、確認という工程はメンテナー側に移り、優先度付けにかかる時間的コストもそちらに移った。

同業と並べて見ると

Anthropicは、このサービスがOSS-Fuzzに触発されたものだとしている。OSS-FuzzはGoogleが2016年に始めたプロジェクトで、ファジングを継続的に実行してオープンソースコードをテストし、クラッシュを見つけるとメンテナーに自動で通知する。OSS Scannerはこれを言語モデルがコードを読んで再現コードを書く形に置き換えたもので、対象は同様に「重要プロジェクト」に絞られている。

本サイトはこれまでにも関連する動きをいくつか報じている。Googleは以前、AIが生成した脆弱性報告が殺到したことを受け、一部のオープンソース製品での受付を停止した。ソフトバンクとOpenAIは企業向けに脆弱性の自動修正サービスを提供する提携を結んでいる。3社の立ち位置はそれぞれ異なり、Googleは報告の流入量を抑える側、OpenAIの取り組みは企業向けビジネス、そして今回Anthropicはオープンソースのメンテナー向けに無料で提供し、再現プログラムと修正パッチをセットにすることで、報告の質で相手を説得しようとしている。

メンテナーにとって参加するかどうかは、自分たちの対応能力次第になる。5000件近い報告のうちどれだけが修正済みか、平均的な対応にかかる期間については、発表では明らかにされていない。参加プロジェクトが増えたときに、確認されない報告が再び負担になるかどうかは、申請リストが公開されて初めて見えてくる。

参考資料:Anthropic公式発表(候補となる脆弱性件数、人による確認、開示基準を満たした割合と報告件数)、anthropics/oss-scanner申請要領、CocoLoop;参加資格と報告の構成についてはAnthropicの発表を確認。